ナキガエル
夏の終わりかけのある午後、西天満あたりを扇町に向かって急ぎ足でガスガスと歩いていると、オレは視線を感じた。アジア雑貨屋の店先で写真のカエルがこっちをじっと見とる。「あ、カエルや」と一瞬足を止めたオレがアホやった。オレは30半ばのオッサンで仕事先に急いでおるれっきとした大人であり、こんなしょーもない木彫りのカエルには何の用事もないのであるが、その絶妙な背中の丸みと雑に塗られた目ん玉に惹かれてついヨロヨロと店先に近寄ってしまった。
その粗雑ペイントのカエルは「おいオッサン、オレの背中コスってみぃ」とオレに言った。オレは言われるがままそのカエルの土手っ腹に真横に突き刺さった棒を抜いて、その棒で背中をコスった。
コロロロロ。コロロロロ。
「カ・・・カエルや!」。
胴の部分が木魚状に空洞化しており、ギロのように背中を棒でコスると、妙に低音の効いたリアルすぎるカエルの声が。こいつは「ナキガエル」という代物で、タイで雨乞いの儀式に使われていたものだそうである。雨乞い?カエルは雨が降りそうな湿気を察知して鳴くのではないのか?逆やがなコレ。
とにかくオレは感動してそのままレジへ。店のお姉ちゃんも親切でナキガエルには他にもいくつか種類があると見せてくれたが、店先でオレを捉えたコイツが音も良く、見た目の雑さも良かった。
この店で見つけた木の皮で装丁されたノート(800円)も欲しかったが、カエルを買ってしまったオレのポケットにはあと550円しかなかった。オレは30半ばのオッサンで仕事先に急いでおるれっきとした大人である。
以来このカエルを持ち帰って何度かコロコロとやってみるが、火山が噴火したり、地震が起こったり、記録的台風が何個も来たりとなかなかエライ利き目である。こわ。
※西天満・老松通にある、布と灯と雑貨の店「フィンチリ」。HPありました→http://www.finchley-road.com/














